純粋培養フルリモート開発組織のワーク&ライフスタイル
コロナ禍をきっかけに、リモートワーク(テレワーク)という働き方の選択肢が一般的なものになりました。特に、原則として出社せず、リモートワークで全ての業務を行う勤務形態は「フルリモート」と呼ばれています。
2023年2月15日に、フルリモートを実践している企業3社(PharmaX、STYLE PORT、モニクル)が集まり、フルリモートの環境下でも業務を上手く回すための心構えや取り組みについて意見交換を行うイベントが開催されました。モニクルからも私、エンジニア中川が登壇し、フルリモートに特化した企業カルチャーや働き方を紹介しました。 今回は、イベントでお伝えした内容をより詳しくお話したいと思います。
はじめに
まずは自己紹介をさせてください。中川幸哉(なかがわゆきや)と申します。Twitter(現:X)では@Nkzn(なかざん)という名前で活動しています。本日は新潟から参加しておりまして、今年で36歳になる、7歳と3歳の子育て中のパパです。
キャリアとしては、2011年から10年ほど農業IT分野でモバイルアプリ開発に携わった後に、現職で資産運用のお手伝いをするサービスである「マネイロ」をITの力で支える仕事に携わっています。
今回は、モニクルという企業がどのような条件下でフルリモート体制を回しているのかを、皆さんにご紹介できればと思います。
モニクルグループの事業と組織
まずは、私たちの事業と組織についてお話ししておきましょう。
後ほど詳しくお話ししますが、モニクルには2社のグループ企業があり、3社を合わせて「モニクルグループ」と総称しています。全体のミッションとして「くらしとお金の社会課題を解決する」を掲げており、各社がミッションの実現に向けてそれぞれの事業に取り組んでいます。
モニクルグループの代表的な事業は2つあります。ひとつはお金の診断・相談サービス「マネイロ」、もうひとつは くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」です。
それぞれの事業について、簡単に紹介しておきましょう。
お金の診断・相談サービス「マネイロ」
1つ目の事業は、お金の診断・相談サービス「マネイロ」です。モニクルのグループ企業である、株式会社OneMile Partners(現:株式会社モニクルフィナンシャル)が運営しています。
お金の診断・相談サービス「マネイロ」https://moneiro.jp/
マネイロは、30〜40代を中心とする「はたらく世代」がお金の不安と正しく向き合うための、お手伝いをするサービスです。学び・診断・相談という3つのアプローチで、お金に関する意思決定をサポートします。
学びとは、豊富な教育コンテンツです。お金に関する基礎知識を身につけることで、お客様自身がどんな課題を持っていて、どうなりたいのかという想いを、形にしやすくなります。毎日開催されるオンラインセミナーを視聴したり、相談の最前線でお客様の悩みを聞いているマネイロのファイナンシャルアドバイザーたちが日々更新しているマネイロメディアを読むことで、お金の「わからない」を解決するための知識を、お客様自身が納得いくまで学ぶことができます。
診断とは、お客様一人ひとりの状況に応じて、将来必要なお金の目安がわかるアプリ群です。3分投資診断は、年齢や年収、老後の過ごし方などの簡単な質問に答えることで、いわゆる「老後2000万円問題」における、ご自身に必要な金額の目安を知ることができます。「持ち家か、賃貸か」のような選択肢を選び直すことで、診断をやり直すこともできますので、どんな人生を歩めばどんな未来が待っているのか、心ゆくまで試してみると良いでしょう。私はどうやっても2000万円を大きく超えてしまうので、何とか稼ぐ方法を考えることにしました……
さて最後に相談です。相談とは、お金のプロであるファイナンシャルアドバイザー(通称:マネイロコンシェル)から人生の状況についてヒアリングしてもらい、これから必要になるお金に関する細かいアドバイスをもらえるサービスです。教育コンテンツや診断アプリを通じて、なんとなくの指針はうっすらと見えてきても、具体的にどんな行動を取れば理想の自分に近づけるのかはわからなかったり、自信が持ちづらいものです。そんなとき、相談に乗って、背中を押してくれるのがファイナンシャルアドバイザーです。
いずれも、お金が足りなくなるリスクを評価して、それに対する備えが十分なのかどうかを一緒に考えるためのサービスです。
幸いにも、この複合的なアプローチは世の皆さんに受け入れられているようで、2022年9月現在、累計のサービス体験者は5万人を突破しています。
事業フェーズとしては、黎明期を抜けて、成長期真っ只中といったところですね。
くらしとお金の経済メディア「LIMO」
次にお話しする2つ目の事業は、くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」です。こちらはモニクルのグループ企業であるナビゲータープラットフォーム(現:モニクルリサーチ)が運営しています。
くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」 https://limo.media/
LIMOは、くらしとお金のトレンドとノウハウを発信するメディアサービスです。「初心者でもわかりやすい」 知識から、 「金融の専門家がチェックしたい」 情報まで、幅広いテーマを扱っています。
2023年1月現在で、月間1100万UUを達成し、現在も成長を続けています。
モニクルグループの組織
モニクルグループの主な事業についてはご理解いただけたと思いますので、次は組織のほうに目を向けてみましょう。すでにお話しした通り、モニクルグループには全部で3つの会社があります。
グループの司令塔としてITプロダクトの開発を行うモニクル、金融サービスを提供するワンマイルパートナーズ(現:モニクルフィナンシャル)、金融メディアを運営するナビゲータープラットフォーム(現:モニクルリサーチ)の3社です。
もう少し細かく見ていきましょう。
モニクルは他の2社に比べると、ITベンチャーっぽい気質の会社といえるでしょう。メンバーの主な構成としては、経営、PM、マーケティング、ソフトウェアエンジニア、デザイナーです。基本的にはほぼ全員フルリモートで働いており、例外は本社で事務処理を行なってくれているバックオフィスのメンバーだけです。
ワンマイルパートナーズ(現:モニクルフィナンシャル)は営業会社っぽい気質です。マネイロは東京と大阪に実店舗を展開しており、お客様が対面での相談を希望した場合のみ、実店舗で面談を行なっています。とはいえ、基本的にはオンライン面談が主流ですので、メンバーもリモート勤務をする機会は多くなっています。メンバー構成としては、大手証券会社、銀行、保険会社の出身者が多く、ファイナンシャルアドバイザーである営業職が大半です。金融サービスの会社と呼ぶにふさわしい布陣ですね。
最後に、ナビゲータープラットフォーム(現:モニクルリサーチ)です。LIMOの記事コンテンツを企画し生み出し続けるということで、メディア会社の編集部といった気質の会社になっています。メンバー構成としても、編集者やライターが大半です。最近の取材等はZoomで行うことが多く、基本的な業務は在宅で行えるため、大半のメンバーがフルリモートで勤務しています。
いくらかのグラデーションはあるものの、グループ全体でフルリモート勤務を中心とした組織になっていることがわかりますね。
モニクルグループの中のモニクル
モニクルの在り方を理解してもらうには、それを取り巻くモニクルグループという環境を知っておいてもらう必要がありました。お待たせしました。これでようやくモニクルという会社の話ができます。
モニクルは、グループ内では最後に生まれた会社です。元々は、はたらく世代向け資産形成相談サービスであるマネイロを運営・管理するために必要な各種システムを開発・運用するためにワンマイルパートナーズ(現:モニクルフィナンシャル)の内製エンジニアリング部門としてスタートしました。
マネイロの相談では、お客様のご相談内容流れに応じて、生命保険や証券を組み合わせた商品提案と営業業務を行うことがあるのですが、このやや特殊な業務ドメインに上手く合致するCRM/SFAパッケージが見つからなかったので、業務効率を最大化するために、業務管理サービスを内製しています。
マネイロのファイナンシャルアドバイザーは、全員が証券外務員資格と保険募集人資格を両方とも持っており、さらに総合的な資産運用の提案までできる金融営業のレベルとしては強めの人材なので、採用活動は非常に丁寧に行っていると思います。そうして見出した優秀なファイナンシャルアドバイザーですから、業務効率を最大化するためのシステムの開発を積極的に進めることでビジネス全体をスケールさせることに繋がるのです。
内製の開発部門を持つことで、顧客管理の自動化だけではなく、相談の予約業務の自動化、セミナー開催・受付の自動化、さらには3分投資診断等の簡易診断の自動化など、ファイナンシャルアドバイザーがお客様への提案内容の検討や、相談業務に専念できる環境づくりを行なってきました。
現在では、前述の通り、会社ごとに役割を分担するために、モニクルという会社として分離し、司令塔でもあり、業務推進・改善のためのクリエイティブ部門でもある、という立ち位置になりました。
当初は営業活動の効率化が主な業務でしたが、2022年からはグループ内の業務効率向上のために内製すべきシステム全般を開発する方向にシフトし、バックオフィス向けのシステムも必要に応じて作るようになりました。また上場も視野に入れて、内製CRM/SFAに記録された売上情報を財務会計上の売上として再計算するためのシステムも必要になりました。これも社内業務に密接に関わるもののため、パッケージではなく内製によって対応しています。
モニクルの開発体制
モニクルの開発体制の話題として、居住地が分散している、という要素はまず欠かせません。
エンジニアメンバーは北海道、新潟県、福井県、東京都、沖縄県、台湾に住んでいます。なお、CTOは札幌市在住で、開発組織としては名実ともに東京中心ではない体制になっています。
また、デザイナーやマーケティングディレクターといった役職のメンバーにも、長野県、北海道、アメリカ東海岸に住んでいる方がいます。
フルリモートの歴史
どうして、そしていつから、このような体制になったのでしょうか。社内でインタビューしてみた結果、このフルリモート体制には古い歴史があることがわかりました。
まず、創業者である現CEOの原田とCCOの泉田が、2013年にナビゲータープラットフォーム(現:モニクルリサーチ)を創業しました。この時点で金融に関する情報を扱うメディアの会社にすることは決めていたので、事業的にフルリモートでいけるだろう、という判断で、創業当初からフルリモート体制を構築していたようです。
その後、メディアだけでは各個人にとっての適切な行動は導けないことに気がついた創業者たちは、相談サービスを行うため、2018年にワンマイルパートナーズを設立しました。このときに現COOの瓜田が入社したのですが、彼はキャンピングカーで車中泊しながら旅先で仕事をするタイプの人でした。関東圏には住んでいるものの、やはりオフィスに居着くタイプではありませんでした。
2019年に、ワンマイルパートナーズのサービスインに伴い、内製CRMの必要性から、1人目エンジニアでもある現CTOの塚田が入社しました。当時、彼は東京に住んでいたので、出社しやすい立場でしたが、家庭の事情から、すぐに札幌へと移住することになりました。役員が関東圏を大きく離れて移住するとなると、会社としてもそれなりの事件です。事件なのですが、役員も投資家も快く送り出しました。フルリモートへの理解が非常に深い経営層です。
CTOから少し遅れて入社した2人目エンジニアは、そんなCTOの様子を見て、家族の都合もあり自分は台湾に移住したいと言い出しました。もちろん、経営層は彼を快く送り出しました。
そこから先は、新潟県に住む私や、沖縄県に住むメンバーなど、どんどんと地方在住エンジニアを採用することとなり、フルリモートありきの開発組織が確固たるものになって、今に至ります。
フルリモートは選択肢ではなく大前提
歴史を紐解いてみると、経営層が元々フルリモート志向だったことにより、出社前提の開発組織を作ろうとした時代がそもそもない、ということがわかりました。純粋培養フルリモート開発組織である、といえるでしょう。
この会社の多くの人々にとって、フルリモートは福利厚生でも働き方の選択肢のひとつでもありません。事実上、フルリモートが唯一の働き方であり、フルリモートが大前提なのです。
2022年12月に都内のホテルを会場として、モニクルグループ全体の納会を行いました。グループの社員ほぼ全員が集まり、1年の振り返りや翌年の目標を話す有意義な会でした。2021年入社以来、リモートのみでやりとりしていた私にとっても有意義なイベントだったのですが、なんと、これがグループの歴史上でも初の全員参加のオンサイトイベントだったらしいのです。リモートがあまりにも普通になりすぎて、みんなで集まろうという発想がなかなか出てこなかったようです。
フルリモートを続けるしかない組織でのワークスタイル
これまでのエピソードで、モニクルが筋金入りのフルリモートを前提にした組織であることがお分かりいただけたかと思います。では、そんな「本当はみんなに出社してもらったほうがいいんじゃないか」という葛藤が1ミリもない環境下で生まれた開発体制は、どのようなものになっているのでしょうか。
勤務形態
まずは勤務形態についてお話ししておきましょう。オフィスへの出退勤の概念が存在しないことや、複数のタイムゾーンで働くメンバーがいることから、厳格な出退勤時刻=定時を設けることは、モニクルの開発組織にとって無意味です。
リモート勤務との相性を考えると、始業時間・終業時間・休憩時間を本人の裁量で決められたほうが良いだろう、ということで、モニクルではソフトウェアエンジニアの働き方として専門業務型裁量労働制を採用しています。
実は入社前、裁量労働制と聞いて一瞬身構えました。というのも、裁量労働と言いつつも、出退勤の時刻は厳密に決められ、「みなし残業」以上の残業代は出ないような、定額働かせ放題プランとして裁量労働制を悪用するIT企業もある、という風の噂を聞いたことがあったからです。
モニクルでの裁量労働はそういったものとは違い、本当に本人の裁量で労働時間を決められるものになっています。
1日の「みなし労働時間」として、10:00〜19:00の8時間が設定されてはいますが、実際にその時間通りに働いている人はほとんどいません。
9:00に業務開始する人もいれば、10:30に業務開始する人もいます。台湾メンバーは台湾時間の10:00である日本時間の11:00に業務を始めたり、もう少し早い時間に始めることもあります。
業務の終了時刻もまちまちで、納得が行くところまでその日のタスクを完了しようと粘る人もいれば、その日はもう無理と諦めて6時間勤務した時点で業務終了する人もいます。
みなし残業がないのもあってか、8時間以上働く義理も特にないので、よほど締め切りが厳しいタスクに追われていない限りは8時間以内で切り上げる人が多い印象です。
自由であるからこその自己管理
こうして見ると、かなり自由な働き方に見えますが、フレックスタイム制のようなコアタイムすらないので、「確実にみんなが集まれる時間帯」というものはありません。会議体ごとにステークホルダーと調整して、全員が参加しやすい曜日と時間帯を調整する必要があります。
また、副次的な効果ではありますが、開発手法としてスクラムを採用していることもうまく働いています。タスクの重みを時間ではなくストーリーポイントという指標で管理することで、実働時間に依存せずに見積もりや計測ができるようにしています。もちろん、直接の依存はないというだけで、ある程度は実働時間とポイントの消化量は比例するので、サボっていても大丈夫というわけではありません。
自発的に周囲とスケジュール調整を行なったり、自由に働きつつもタスクを消化できるだけの業務時間を確保できそうか、といった管理・調整ができそうかどうかは、採用における重要な観点になっています。
コミュニケーションツール
次に、モニクルで使っているツールについて見ていきましょう。
Google Workspacesが中心ですが、専門性の高いツールについてはGoogle外のものも多く使っています。まず、Google Workspacesでは、次のツールを頻繁に使っています。
- Googleカレンダー:スケジュール調整
- Googleスプレッドシート:データ共有、プロトタイピング
- Googleドキュメント:議事録、仕様検討
- Gmail:外部連絡等
また、それ以外のものとしては、次のツールを使っています。
- GitHub:ソースコード管理、コードレビュー
- Around:常時接続のビデオチャット
- Slack:非同期のテキストコミュニケーション
- Scrapbox:テキスト表現が可能なあらゆるノウハウを書き溜める
- Jira:課題管理システム、カンバンによる進行管理
結果的に、1200人以上でリモート勤務をしているGitLab社のAll-Remote施策に少しずつ近づいているように感じています。
もちろん彼らのほうが何枚も上手ですが、ほぼ全てのメンバーがフルリモートで働いている点や、メンバーが地理的に離れていること、複数のタイムゾーンを跨いでいることなど、いくつかの共通点があるため、彼らの施策は参考になります。
いつかモニクルが大きくなろうとした時に、参考にすべき点が豊富にあるのかもしれません。
孤独にならないためのビデオチャットツール、Around
さて、モニクルで使っているツールの中で、特筆すべきものといえば、Aroundです。
- Around https://www.around.co/
モニクルの開発チームでは、ビデオチャットを常時接続しています。当初はZoomでしたが、全画面だと圧が強いので、圧が低いAroundを重宝するようになりました。
画面の端に小さめの丸が並んでいるだけなので、ほとんど圧がありません。また、容易に映像にフィルターをかけることができ、これもまた圧を減らす方向に作用しています。
入室を強制しているわけではありませんし、カメラを切るのも禁止していませんが、業務中のほとんどの時間を入室してカメラオンで過ごす人が多いように感じます。
これは、お互いに常時接続していれば「いつでも気軽に話しかけられる」「いつでも気軽に話しかけてもらえる」という安心感があるからかなと私は考えています。そこに人がいる、というだけでも作業が捗るのは、さぎょいぷ(※)的な文化とも近いところがあるのかもしれません。
※ さぎょいぷ:「作業Skype」の略。何か他の作業をしながら通話すること。オンライン通話ツールとしてSkypeが一般的だった時代に生まれた言葉だが、ツールが変わっても用語だけは残った。
快適な常時接続のため
ビデオチャットを常時接続することで安心感を醸成するにあたり、大きな問題になったのが、マイクの質や環境音に由来するノイズです。得てして本人が気づかないままに他の人に迷惑をかけてしまうパターンが多いため、ノイズの問題を放置すると、気を遣って入室しなくなる人が出てくる恐れがありました。
対策として、原則すべてのメンバーに、ノイズキャンセリングツール「Krisp」のライセンスを会社負担で配布しました。
このKrispは本当に良くよくできており、導入すると環境音が一切入らなくなります。イヤホンを付けていても、誰も喋っていない間は無音になるくらいです。相手の環境音が聞きたいタイプの人には物足りないかもしれませんが、大人数になってくると心地良い環境音ばかりではないので、音を消すほうに寄せることにしました。
導入時の、CTOの喜びの声をご覧ください。
会社負担で krisp 導入が決定したので早速みんなで設定したらノイズのない世界になって最高すぎた。相手のノイズがなくなるのも嬉しいけど、自分がノイズを与えてないという安心感が特に良い。
— がぶ (@gabu) February 10, 2021
やはり他の人に迷惑をかけていないという安心感は何にも代え難いものです。
ノイズ対策のもう一つのアプローチとして、マイクの支給も行なっています。マイクの品質次第では、ただ喋っているだけでも聞いているのが辛くなるようなノイズが乗ることがあります。人間が発話する音声はKrispでは遮断できないため、別のアプローチを取る必要がありました。
会社側としてもリモート勤務を半ば強制している以上、通話に必要なものはパソコンと同じ重要度で扱うべきだろうということで、マイクとWebカメラを支給するようになりました。
マイクの品質も上を見たらキリがありませんが、ひとまずコスパも勘案して、最低限はこのくらいで良いだろう、と選んだものです。もし「こちらのほうがコスパいいよ」というものがあれば、私にこっそり教えてください。
このように、フルリモートなりに快適な仕事環境を、会社ぐるみで模索しています。
フルリモートの仕事術
他にも、フルリモートならではの仕事の工夫がいくつもあります。
例えば、社内の予定はGoogleカレンダーで一元管理されており、メールアドレスさえわかっていれば、メンバーの予定を確認することができますし、自分のカレンダーに予定を入れておくことで他の人に見てもらうことができます。
コアタイムがないので、お互いの予定をすり合わせながら時間を決める必要があります。ミーティングをしたいのであれば、相手のカレンダーから空き時間を見つけて、お互いを参加者にした予定を作るのが社内では一般的です。家庭の用事などがある時間帯には、その旨を予定として入れておいて、ブロックすることもあります。
また、要件、仕様、手順書、議事録等のドキュメントは、たとえ口頭で伝える予定のものであってもScrapboxやGoogleドキュメントに記載して共有しています。ミーティングに参加できなかった人や、後からプロジェクトに入ってきた人に参照してもらうためです。
リモート勤務では、口頭で同期的に説明するコストが非常に高くなるため、非同期的なコミュニケーション手段として、ドキュメントの共有を積極的に行なっています。
最後に、これは仕事術と呼べるかどうか迷うのですが、Slackでポジティブなリアクションを意図的に増やしています。褒める文化ともいえそうですが、これが意外とリモート勤務の潤滑油になっています。
褒める文化
褒める文化について、もう少し掘り下げておきましょう。モニクルのSlackワークスペースでは、褒めたり感謝するためのリアクション用絵文字が多めに整備されています。
そんなに褒める必要があるのかと思われるかもしれませんが、これがかなり良い潤滑剤になっているのです。
皆さんも多かれ少なかれ経験があるかと思いますが、人類はテキストコミュニケーションがさほど得意ではありません。悪意なく書いた文章が、言葉足らずで読み手を傷つけてしまうケースに覚えがある人も多いでしょう。
また、悲しい人間の性として、批判するための文章よりも褒めるための文章のほうが筆の進みが悪くなりがちです。そういった事情が絡み合い、自然と行われるテキストコミュニケーションは、殺伐としやすいのです。
さて、そんな中で、もし褒めたり感謝したりするための絵文字が豊富にあったらどうでしょうか。褒める文章を考えて書くのは難しいとしても、「ナイス○○」をひとつ選んで押すくらいなら、簡単にできますよね。
Slackに何かを投稿したときの悲しいことの一つとして「何の反応もない」がありますが、豊富な、そしてポジティブなリアクションのおかげで、モニクルでは何かしらの反応が返ってくることが多くなっています。おかげで、パブリックチャンネルに書き込むハードルが下がり、Slack全体の雰囲気も良くなっているのです。
ビジネスサイドとのコミュニケーション
現場のエンジニアがフルリモートで快適に過ごせたとしても、仕事はエンジニアだけでやるものではありません。経営層やマネージャー、営業部門(ワンマイルパートナーズ)とコミュニケーションを取るためにも工夫が必要です。
とはいっても、モニクルの経営層は長年リモート勤務を続けてきた猛者ばかりです。前述した、ドキュメントを書いて共有する文化については、現場よりも経営層のほうが上手く扱えているように思います。入社以来、口頭のみで指示が来たことはほとんどなく、事前にドキュメントが共有されているか、その場でドキュメントが作成されるかのどちらかでした。
現場レベルでは、ワンマイルパートナーズの業務推進担当とモニクルのプロダクトマネージャーでタッグを組み、どうすれば業務が効率化されて事業がドライブできるかを議論して要件定義を行っています。
フルリモートを続けてくれそうな組織でのライフスタイル
さて、ここまで仕事の話をしてきましたが、少しだけ家庭や生活の話もさせてください。
私は新潟県から働いているわけですが、フルリモート勤務の会社を選ぶ上では「フルリモートのハシゴを外されない安心感」のようなものが重要だと思っています。地方在住の子育て中エンジニアとしては、「来月から週1出社にするから」と突然言われて、転職活動を余儀なくされる状況は避けたいのです。実際に、私が面接官になった採用面接では、そういった事情で転職活動中の方とお話しする機会もありました。
モニクルの良いところとして、現場よりも経営層のほうがよほどリモート勤務を続けたがっている、という点があります。何よりCTOが札幌市に移住しているので、出社前提の組織になる可能性がかなり低いのです。
突然の転職活動は家族に要らぬ心労を与えることになるので、家庭が荒れる要因がひとつでも少ないのは、とても気が楽です。
家庭と仕事のバランスを支えるカルチャー
前述の通り、裁量労働制の労働者側の利点を最大限に生かすために、スケジュール管理などを工夫しています。そのおかげで、私は家庭のための時間をかなり柔軟に確保できているので、ここでご紹介します。
次の表は、平日の私のタイムスケジュールです。
朝9時までは、子供2人を学校へ送り出したり、園へ送迎したりするために奔走しています。園からの帰宅後は朝食の後片付けや洗濯などの家事を行い、気づけば10時を少し過ぎているので、業務を開始します。
16時には子供の迎えに行くので、仕事を中抜けします。帰宅後は夕食を作ったり、家族と夕食を食べたりして、18時まで過ごします。この時間を取れることで、奥さんの負担をかなり減らすことができているはずです。
18時からは、私は仕事に戻り、他の家族はお風呂に入ります。私の仕事は21時まで続くので、それまでに家族は寝てしまうことが多いです。
家事、育児、仕事のタスクを1日の中で細かく切り替えながら、なんとか8時間くらい働いています。業務終了が21時になるのは辛そうにも見えますが、夕方に家族と夕食を取った後なので、見た目ほどはつらくありません。
私のケースは極端ではありますが、他の子育て中のメンバーも、夕方〜夜の時間帯になると、カレンダーに家事育児の予定が入っています。
イクメンアピールのために入れてあるわけではなく、家庭と仕事のバランスを取るために必要な予定です。これを入れておかないと、採用担当から夜の時間帯に採用面接をできないか打診されることがあり、子供をお風呂に入れる時間と被ってしまう可能性があります。カレンダーに家庭の予定を入れておくことも、重要な仕事なのです。
定例ミーティングも各家庭の生活リズムの合間を縫って設定されることが多く、年に数回、プロジェクトのメンバーが増えたり入れ替わったりするたびに、定例ミーティングの時間帯を見直しています。メンバーの家庭があってこその会社、という意識がある程度共有されていることもあり、家庭の事情に合わせて業務を調整しあうカルチャーがあるのは、ありがたいところです。
広がる採用の可能性と課題
最後に、採用の側面から見たフルリモートの良さについてお話ししておきましょう。
なんといっても、日本全国を対象にして採用活動ができるのは、大きな強みですが、全国採用とモニクルの事業には、意外なシナジーもあるのです。
地方には、東京に移住するという選択肢がないソフトウェアエンジニアもそれなりにいます。その理由は、地元愛だったりすることもありますし、うっかり家を建ててしまったからだったりもするでしょう。そういった人たちが収入を増やす方法を模索したときに、フルリモートという選択肢はとても魅力的なはずです。
また、地元で結婚して、子供が生まれて、周りと同じように家を建てて、という人生のフェーズにいる人は、将来のお金への不安を持ち、資産運用に関心を持ちやすくなります。これはまさに、マネイロ事業が解決したい課題そのものです。
地方在住のソフトウェアエンジニアには、ある程度の割合で、マネイロ事業に心から共感してくれる層が紛れているかもしれないのです。これが、全国採用とモニクルの事業のシナジーです。
今後の課題
採用に関する課題として、現在はシニア層の中途採用しか上手くいっていないことが挙げられます。
ジュニアレベルのエンジニアを採用したとして、フルリモートでオンボーディングできる自信が、私たちにはまだありません。いわゆるハードスキルと呼ばれるような、プログラミングスキルの指導であれば、ある程度はできるのかもしれません。
しかし、社会人の心構えのようなソフトスキル寄りのものになると、どう指導したものか、皆目見当もつきません。
将来的には解決しないといけない課題ではありますので、偉大な先達であるGitLab社の事例などを学びながら、いつかは新卒やジュニア層のエンジニアも採用できるよう、体制を整えていきます。
本日の発表は以上です。ご清聴、ありがとうございました。
※2024年2月6日付で、株式会社OneMile Partnersは株式会社モニクルフィナンシャルに変更いたしました。
※2024年9月4日付で、株式会社ナビゲータープラットフォームは株式会社モニクルリサーチに変更いたしました。
モニクルで一緒に働く仲間を募集しています
モニクル採用サイト https://recruit.monicle.co.jp/
エンジニア中川 カジュアル面談
株式会社モニクル
Corporate Productivityチーム エンジニア ※肩書きは記事公開当時
中川 幸哉 Yukiya Nakagawa